第24章 繋がること

『ねえ…お願い……頑張らないでよ、もう』

｢なんで…頑張るも何も、俺が意地になってるだけじゃんこんなの｣

『カルマ、は…優し……から…ｯ、…だ、から…っ』

｢……俺、蝶のこと泣かせたくて意地張ってたんじゃないんだけど｣

興奮がおさまったのか、一つ息を吐いてから、彼は私の頭を撫でる。
大きい手…中也より大きくて…彼のよりもまだまだ細い、そして純粋な手。

『意地…張らないで…？も…いいから…』

｢だぁから、これは俺と渚君の問題で『嘘つき……それ、以上嘘ついたら…ｯ、私の記憶…消すよ…っ？』…それはずるいって｣

降参、と言うように、背中にも腕が回される。

｢…俺、負けたくないんだけど｣

『なんでそんなに負けたくないの？…分かってるんでしょ？もう自分の気持ちはスッキリしたってことくらい』

｢スッキリとか…言うねぇ師匠？｣

『……もういいから、休んで…無理しないで……自分のこと殺してまで、私のこと考えないで』

言った途端に刺さった視線。
多分…いや、間違いなく皆が気が付いた。

皆に伝わった。

｢…ほら、またそうやって全部自分で背負おうとする…悪役買って出なくていいって｣

『悪役買って出たのも…背負ってたのもカルマじゃない』

｢背負ってないし…え？そんなに悪役っぽかった？｣

『……お願い…もう頑張らないで…？…お願い、だから…ｯ…我儘、言うからぁ…っ』

私が動き出す理由なんて、本当にいつもシンプルで。

ただ嫌だったんだ、初めて自分を受け入れてくれた友達が、必要以上に苦しめられるのが。
嫌だったんだ、彼が折れてくれないのが…私のために負けられなくなってしまったのが。

怖くなったんだ。

『カ、ルマ君…っ、が…背負わなくてい、のにｯ……』

彼が、中也のようになってしまうのが。
中也のように、全てを捧げてしまいそうな危うさの片鱗を見せてしまうのが。

｢…背負ってとかないんだけど…でもまぁいっか……俺にも、“我儘”使えるようになったじゃん｣

『ぅ…あ…っ、…だ、って……だって、カルマく、っ…が…』

｢分かった分かった、降参降参。泣かないでよもう…俺はあんなに頭おかしくないから大丈夫だって｣

｢あ？あんなにってどういう事だよおい？｣

｢だから、中也さんみたいに頭おかしくな…は？｣

｢｢｢………んん！！？｣｣｣

聞こえたのは大好きな声