第18章 縁の時間

ベッドから落ちるタイミングで蝶を庇えたのも、本人に痛みがなかったのも俺もあまり痛くなかったのも全然いい…可愛らしい目を見開いて意図していなかったキスに驚く蝶の表情も惚れ惚れするほど愛らしい。

それは良かったんだ。

俺を見下ろす、餓鬼共さえこの場にいなければ。

「ち……ｯ！？手前ら何をｯ…ち、蝶！？大丈夫か！！？どっか打ってな………ｯん！！！？」

「「「蝶ちゃん！！？」」」

しかしそれが分かっているはずなのに、お構い無しに続ける蝶。
これは想定外にも程がある、いい加減に拙いだろ。

「……ｯち、よ………一回やめ…っ」

『………ｯ、きゃぅんっ！！？♡』

強硬手段で首筋を撫でた。
それもいやらしい触り方…蝶の身体に覚え込ませた触り方。

それにより蝶は必死に声を抑えるために悶え始め、俺へのキスの嵐は止んだ。

『ふ…っ…ちゅ、やさ……手離し……ｯ』

「さん付け直せるくらいまで一旦冷静になってからな」

『ぁ……っ、直す！！直ｯ…』

潤ませた瞳が何を訴えるのか。
今は知らないふりをした。

「……で、中也さん何してたの？凄い音がしたから来てみたら…」

「…落ちたのは事故だが……まあいつもの事だ、気にすんな」

「「「いや気になるだろ！！！」」」

揃って突っ込まれた。
いやでも中学生の教育には悪すぎんだろ…

蝶の首から手を離せば、肩で息をしながら蝶はｸﾀﾘと俺の方にまたもたれかかる。

『はぁ…ｯふ……っ……な、んでｯ…』

「なんでも何も、お前なぁ…こいつらまだ一応中学生なんだぞ、教育に非常によろしくねえだろ」

『…ｯ……』

それでもしていたかったのだと、一緒にいたいのにどうしてと、澪さんモードに入ってしまった蝶は目で伝える。

「白石さん中原さんにベッタリモードになっちゃったんだね…き、キス以外なら大丈夫かも……って早！！」

潮田が言った瞬間に窒息させるほどの勢いで俺の首元に抱きついてきた蝶。
なんだなんだ今日は…少し色々とやり過ぎたか？

『……っ、ゃだ…』

「…あー……どうしようか？…この姿勢のままじゃお前も辛いんじゃ……」

「…中原さん、白石さんがこういう風になってしまう原因としては何が考えられるのでしょう？」

担任が遂にそれを俺に聞いてきた。
蝶は過度に俺に対して甘えたがりになる時があるのは確かだが…話していいものか？