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第18章 縁の時間


元いた世界…基、死後の世界とやらは、どうやらどの世界からも共通している行先らしい。

生前の記憶は無いまま、向こうの世界で生きていき…その世界にも、病や死というものが存在する。

蝶の言っていたような、現世で生活するための魂の器は本当に誰でも知っているようなものであったらしい…のだが、以前聞いていたように、少女の身体に埋め込まれたとある核が少女を生かし続ける要因となっているそうだ。

そして、それが同時に彼女をその世界から追い出してしまうものになってしまった。

本人がそうしたかったわけじゃない、第三者に利用され、悪用されただけだった。
偶然と策略とが生み出した悲劇でしか無かった。

世界を滅ぼしかけてしまったのだ…死後の世界と、それだけに限らず、そこと隣接した生みの親のいた世界まで。
利用されただけとはいえ、また同じような思想を持つ者に悪用されることを恐れたその世界の秩序を守る者達は、少女を人間としては決して見てはいなかった。

中にあるその核を見ていただけだったのだ…物としてしか、見ていなかったのだ。

少女の愛した世界は…少女が愛を知った世界は、権力と人間のエゴによって奪われた。
そうして会えなくなってしまった。
自分が死ぬまで、永遠に。

だけど少女は帰れない、会いたい者達に会えもしない。
何故なら少女の中にはその核があるから。
少女は死ぬことが出来ないのだから。

こうして話は戻ってきた。
そういう事か、そういう事だったのか。

だから少女は以前、俺に頼み事をしてきていたのだ。
だから少女は、俺にそうして欲しいと懇願したのだ。

もしもの時は、その“核を中也さんが壊してください”と。
もしもの時は、“殺してください”と。

自分の殺し方を知る者が現れてしまったからと、恐れた少女は俺に事細かに自分の推察した殺し方を伝えた。

あの時と同じ言葉も、今となってはこの俺の胸を痛めるものにしかならない。

『………私ってそんな奴なの。…弱いでしょう?なんにも出来なくって、一番手放したくないものを手放しちゃったんだ…だからさ、中也さんだけはって思うのに……っ、優しくされたら死にたくなっちゃうんだぁ…ッ』

「…名前、呼ばれるのはなんで嫌になった」

『……優しく、呼ぶから…重なっちゃうんだもん…ッ……』

「!…そういう事………じゃあさ、蝶。____」

『え…っ?』
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