第18章 縁の時間

話を聞いてみればあらびっくり、ソラさんは私へお礼をしたいがために中也に相談を持ちかけたのだとか…それも元々中也にベタベタしていたあれは演技であって、特にそこまで深い思い出があったというわけでは本当に無かったそうだ。

｢そういう事だ、お前も分かってただろ？人の演技見抜くのとか特別得意じゃねえか｣

｢ああ、やっぱりバレてましたか…｣

『え、私全然気付いてなかっ…………そんなの当たり前よ、分かってたに決まってるでしょ。当然じゃない』

｢待て、今の完全に本音だろお前。聞こえたからな…つうか珍しいな、俺でもあれが演技だったことくれえ見抜けたぞ？｣

中也が気付いた演技に私が気付けなかった？
いや、私の方がそのへんは得意なはずなのに…

『…中也さんがデレデレしてたからよ！！』

｢いつ俺がんな事したよ！？してねえだろ！！！…って本当に分からなかったのか！？｣

『！……し、仕方ないじゃない…嫉妬させるのが悪いのよ』

｢中原さんには相手にもされませんでしたしね、まさかこんなにも惚れ込んでいらっしゃるお相手がいたとは想定外でしたけど…どうしてそこにはお気づきに？｣

惚れ込んでって…

頭の中でソラさんの言葉を繰り返して顔を真っ赤にした。
え、周りからそんなふうに見えてるの、意識した事無かったよ私。

『…ってそうだ！全然相手の企みとかには気付いてもなかった上に鈍感にも程がある中也さんがなんでそこに気付いて！？』

｢貶してる事はよぉく分かった、帰ったら覚悟し『事実じゃない』…気付いたも何も、普段から隣にこんな俺しか見えてねえような女がいりゃあなんとなく分かんだろ。相手が俺の事そう思ってるかどうかくらい｣

『え…えっ！？何それ中也さんどういう…｢んでお前もとっととさん付け外せ、酔っ払い｣さ、さん付け…ああそうだ中也さん…』

言い直した途端に流れる沈黙。
そしてｶﾞｼ､と鷲掴みにされる私の頭。

｢いい度胸だなァ？直すつもりはありませんってか？ああ？｣

『いた…ちょっ、中也さん痛……！！』

｢また呼んでんぞ｣

『ら、って中也さんは中也さんで中也さんだからぁ…っ』

｢連呼すんな阿呆……まあそういう事だ、雰囲気で分かる。何年も一緒にいたからな、蝶とは｣

私の頭掴んだままいい感じにしめくくるとかなんなのこの人。
いやかっこい…何気に私の事話してるから全然許すけど。