第12章 夏の思い出

中也さんに突然抱き上げられて、それに驚いてあたふたしている内に、彼の寝室に連れ込まれてしまった。
ベッドに降ろされ、保健室であったように中也さんが上から覆いかぶさる。

｢覚えてねえのも無理ねえわな、意識なかったわけだから…まず一つ、お前を好きなだけ乱れさせてやりた『何言ってんですかいきなり！！？』…流石に今日はしねえよ、お前まだ回復しきってねえんだから｣

ホッとしたのと同時に何故か少しだけ冷静になった。

あれ、なんで私ちょっと寂しがってんのよ。
いいじゃない、恥ずかしい事しないんだから。

………触れてもらえないとか考えてるんじゃないわよ、私の馬鹿。

｢んで二つ目、これがしてえ事だな｣

『！二つ目…？』

｢流石にこれは覚えてんだろ？俺の好きなようにキスさせろ｣

『え、やだ』

即答だった。
一瞬で沈黙に包まれる室内。

確かに覚えてる、そうだ、したような気がするそんな約束。
けれど口をついて反射的に出てしまったのがこの言葉。

｢お前…｣

『だ、だって中也さん鬼みたいにずっとしてくるから…』

｢………おおそうか、俺は鬼か。そうだな、なら容赦しねえ｣

『え……待って下さ…！ちょ、中也さ……ｯ！…んんん、！！』

少ししたら息継ぎのために唇を離して、またすぐにそれをくっつける。
雨のように降り注ぐ啄むようなキスに、顔が蒸気して更に熱くなってきた。

『ぁ…ｯ、はぁ……、は…っ』

｢なんだかんだ言いつつ結局好きだよな。もう可愛い顔んなってる｣

『！！や…ｯ、見ないで下さ｢ほら、また言った｣…？』

少し潤んでいる目を薄く開いて中也さんの方を向くと、中也さんが人差し指を使って私の顎をｸ､と上に少し上げる。
弱いところに刺激が走って肩を大きく跳ねさせてしまうのだけれど、動かない指に次第にぞくぞくとした小さく連続する刺激へと変わっていく。

｢呼び方元に戻ってる…あとまた敬語んなってんぞ｣

『…っ、こ、な状況で呼べるわけが……ｯひ、ぅ…っっ』

ﾂﾂ､と動く中也さんの指に翻弄され、何も言葉が紡げない。
この人の呼び方だけは意識してても敬称を外しにくい。

｢ちょっと前までえらく好戦的だったのはどうしたよ？｣

『ち、中也さ…中也……く、首はｯ…』

｢おお、そうそう。言えんじゃねえか｣

『へ！？ちょｯ…ん、ぅ……ｯ！！！』

キスの嵐が悪化しました。