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第12章 夏の思い出


「ちょっと、僕が烏間さんに話しに行ってる隙に何しようとしてたわけ!?ここ学校の保健室だから!!そういう事する場所じゃないから!!!」

「ベッドの上で蝶ちゃん押し倒して何しようとしてたの中也さん」

「な、なんかドラマでも見てるみたい…大人の恋愛見てるようにしか見えなかった」

不破ちゃんの妙に掠ってる突っ込みに皆思うところがあったのか、誰一人として反論も何もしなかった。

変に鋭い事言ってるから驚かないフリをするのにも一苦労だ、中也さんが。
…ああ、違う違う、中也だ中也。

「手前らもう戻ってきやがったのかよ…チッ、邪魔が入った」

「「「この人今堂々と邪魔って言ったよ」」」

『こら、邪魔とか言わないの。乙女の唇いきなり奪おうとした大人が子供みたいな事で文句言わない』

「「「どっちが大人なんだか…!!」」」

あからさまに舌打ちをした中也さん…じゃなくて中也。
そんなにキスがしたいかこの人は、もう夏休み終わったのにこの調子で日中大丈夫かな。

「文句じゃねえだろ、文句じゃ。あともう少しだったってのに…今していいか」

『だめに決まってるでしょ、一週間本気で避けるよ?』

「よし、とっとと帰る用意すんぞ。教室だ教室、挨拶して一刻も早く帰ろう」

「「「切り替え早っっ!!?」」」

中也に促されて彼の手を取り、ゆっくりと立ち上がって歩く。
そろそろ普通に歩けるかとも思ったけれども、どうやら二日動いてなかったせいで貧血に加えて余計に動きづらいらしい。

こんな事さえも見通していたのか、はたまた過保護なだけなのか…どちらにせよありがたい上に嬉しい事だ。

デリカシーは無い癖して、こういうところで気が利きすぎるんだよなぁこの人。

血液の回復にだけはどうしても時間がかかるようになってしまっているこの身体…

体外に出てしまった分をすぐに戻す事なんて不可能な事。
私の体質はあくまでも再生能力、そして移し替えの能力だ。

普通であれば、代償もなしに何かを生み出すことや消すことは出来ないのだから。

『……山降りる時にフリーランニングして行っちゃダメ?』

「阿呆か、だめにきまってんだろ。帰りも寄り道せず真っ直ぐ横浜に…」

『クレープは??』

「…忘れてた、すんません。いや、まじですいません!!!行こう、んで好きなだけ食え!!!」

「「「頭下がりっぱなしだなあの人」」」
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