第12章 夏の思い出
『私の体は元々、悪用であれ世のためであれ、私の力を必要とする人のために作られたものだから…私に認められる事が条件なんだけど、そういう人に力を分けるための体だから』
「……そりゃあ、あのイカれた科学者も原因も何も分からねえわけだ。試しにお前の細胞を無理矢理移植したマウスもすぐに事切れていた…お前の意思で能力を使ってする分には大丈夫だったんだろ?」
コクリと頷くとよしよしと言いながら宥められる。
「それが俺になると無条件に全てが俺のために働いてくれるってか…そりゃあありがてえ話だ。でも、それなら有害物質なんかは全部追い出してくれてたんじゃねえの?」
『そんなことして中也さんの体質に異常が出たら、病院に行けなくなっちゃう…今の分はダメージの修復に回ったんだと思う』
「そうか……なんだよ、お前あんな態度だったくせして、昔っから俺の事大好きなんじゃねえか」
『…………助けられた日から、私は中也さんのものだから』
どこかで信用しきってしまっていた。
だからこそ恐ろしかった。
突然現れた、頭のおかしな優しい人間が。
「思う力は強いってか?…んじゃ、そんなに俺の事が好きな蝶さんの手を借りて、安全に残りの血液を頂戴するとしますかね」
『…本当、頭おかしいんじゃないの』
「鉄のねえ血なんかほぼ無味になるんじゃねえかって思うけどな。ほら、残り後少し…無茶はしねえから頼むよ。つか飲んだら寧ろ元気になれんだろ、それ」
調子良すぎ、と呟いてから、今度は有害物質を気化させつつ血液を移動させる。
中也さんは飲むなんて言ってるけど、そんなことさせられるわけがないじゃない。
『……っ、…』
中也さんがしたように、自分の掌に移動させてそれをコク、と飲んでいく。
「蝶、お前自分の…」
『は、っ…ぁ、よく飲めるねこんなの……ッ、ン……っ!?…ふ、んぁ、っ……あ、ッ…』
再び口の中に、今度は一気に血液を含んで飲み込もうとした。
なのに中也さんは私の後頭部を押さえて、無理矢理キスをしてそこに舌をねじこんでくる。
自分の方が下になるよう角度を変えられ、すぐに血液が流れ出していく。
自分で飲まなければと飲んでいくものの結局中也さんの方に無理矢理持っていかれてしまって、最終的には深いキスをされながら口内をなぞられ、血の風味さえ無くなりきった。
「……なんか甘ぇ…ごっそうさん」