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僕の視線の先に

第10章 秋風





夏休みが終わると、
一気に涼しくなる。




2学期が始まり、守山先生は
他県に異動した。
始業式に、一言挨拶があり
『一身上の都合で他県に異動』
と、みんなには伝えられた。



「カナ、守山先生とデキてたんだってー」


「えー、じゃあ、飛ばされた、って訳。」


「まぁ、でも守山先生、人気あったからね」


「教師はまずいっしょ。」




あちこちで、こんな会話が聞こえる。
狭い街、狭い学校だ。






「カナ…大丈夫かな。」




さすがに今日は、カナは学校に来なかった。









始業式が終わり、
僕は、部室に向かった。




「ユウスケ。」



振り向くと、守山先生だった。



「先生…。」







僕らは、まだ誰もいない
部室に入った。




「ユウスケ。申し訳ない。」



僕に頭を下げる。




「先生の方が大変ですよね。他県に異動なんて…」



「ん…まぁ、他県って言っても、俺の地元だから、実家に戻るだけだよ。」


少し疲れた目をしていた。




「カナとは、別れたんですか?」


「…」



先生は、僕をまっすぐ見た。



「今はね。」



「やはり、教師と生徒はまずい。ほとんど学校以外では会っていなかったんだ。メール位だ。」


「学校でも、ちゃんと距離は置いていたよ。それでも、意識してたからな。…ふぅ…」




先生は、溜まっていた気持ちを
ため息と一緒に
吐き出した。





「卒業したらさ、その時に迎えに来るよ。
あいつ、俺の地元の大学受けるからさ。」




なんだ。



そうなんだ。



カナが言っていた、大丈夫、って
こういう事か。




だけど、不思議に
ちょっとホッとした僕がいた。





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