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僕の視線の先に

第16章 僕達の感情




ケイタが死んだ。






気が付いた時には、お通夜だった。



まだ雪が残る田舎町。
駅前から、喪服を着た人達が、
ケイタの家に向かって行く。
夕方過ぎの薄暗がりの中、
所々、案内の提灯の灯りが灯っている。



僕は友人代表で、ケイタの父さんの手伝いをした。
カナは、受付を手伝い、僕の母さんは、ケイタの母さんの横に付き添い、弔問の方々に、挨拶をしている。


学校の校長、部活の顧問、小学生クラブチームの監督も弔問に来た。

友人もたくさんいた。
みんな泣いている。


「何でケイタが…」





そうだ。何でケイタが。
怒りの矛先は、今、取り調べ中だ。
何が指導の一貫だ。
ふざけるな。
奥歯を強く噛みしめ、眉間に力が入った。




「ユウスケ…」



受付から離れて、カナが来た。



「警察が来たんだけど、おじさんどこ?」




受付に、大柄な男性が2人立って、こちらを
見ていた。



「ご案内します。」



奥で、葬儀社と話をしていたケイタの父さんの所へ案内した。







ドガッ!!!




ケイタの父さんは怒りに打ち震えていた。
怒りの矛先をどこにも向けられず、部屋の
壁に、思い切り拳をぶつけた。
幸いにも、それは僕しか見ていなかった。
僕の父さんが、物音を聞きつけ、飛んできた。






警察の話では、倒れた前日のみならず、
今年に入ってから、毎日のように殴られていて、顔ではバレてしまうから、背中やお尻、腿など殴り、蹴飛ばしていた。
それ以上の暴力も受けていて、聞いているだけで、怒りと憎悪が、マグマのように湧く。

身体と精神、共に、非道な暴力を受けていた。
長年、先輩として慕ってきた林田の歪んだ感情に、ケイタは殺された。






ケイタの告別式の日、林田は逮捕された。








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