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孤独を君の所為にする【歴史物短編集】

第12章 密か【イケメン幕末】


「近藤殿!」

屯所に向かう途中、市中の雑踏で見掛けた御姿。

私はその背に声を掛けた。

「おお。隼多じゃないか。」

振り返った近藤殿は相も変わらず屈託の無い笑顔を浮かべ私の名を呼ぶ。

「近藤殿、どちらへ行かれるのですか?」

そんな近藤殿に駆け寄りそう問うてみると

「どこって……屯所へ戻る途中なのだが。」

不思議そうな顔をして答えてくれた。

「…………屯所ならば逆方向です。」

「おっ……そうか。」

ああ、やはり迷っていらしたのだな。

この様子では迷っていた事にすら気付いていなかったと見える。

本当にこのお人は素直で、何とお可愛らしい。

随分と年下の私が「お可愛らしい」などと表するのも失礼だとは思うが、正にこの表現がしくりと来るお方なのだ。

あの武装集団新撰組の局長であると言うのに。

「私も屯所に向かう途中です。
 一緒に参りましょう。」

「うむ。そうするとしよう。」

このまま放っておいたら何処へ行って仕舞われるか分からない。

私は然り気無く近藤殿を誘導し、共に歩き始めた。
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