第2章 深まる関係
日曜日、あたしと紫音は徹を見送るために駅に向かった。
改札の前に徹はいた。
「徹!」
名前を呼んで駆け寄ると、徹は紫音を見てあからさまに嫌そうな顔をした。
「マジで別所も来たのかよ…。」
「約束は守るよ。」
「約束なんかしてねぇよ!」
徹があたしを見た。
「七瀬、悪いな。」
「何が?」
「シュリも俺もいなくなったら、お前大学で一人になるだろ。」
「そんなこと気にしてくれてたの?」
正直、意外だった。
徹は今、シュリの事で頭がいっぱいだと思っていたから。
大丈夫…そう言おうとした時、紫音があたしの肩を抱き寄せた。
「大丈夫だよ羽山君。七瀬には俺がいるから。」
「あ、そう。まさかお前らがくっ付くとは思わなかったよ。ああ、そうだ別所。男は25歳までしか身長伸びないらしいぞ。あと5年で七瀬を越えられるといいな。」
紫音の顔が引きつり、徹はニヤリと笑った。
「あのさぁ、しばらく会えないんだから仲良くしなよ。」
呆れてそう言うと、徹が再びあたしを見た。
「なに?」
「お前ともしばらく会えねぇな。」
「まぁ…そうだね。」
「夏休み、来れるの?」
「うん。もう親にも許可取ったから。」
「ふーん。別所は連れて来るなよ。」
「羽山君さぁ、七瀬ともしばらく会えなくなるのが寂しいんでしょ?素直にそう言えば?」
紫音が横から口を出し、徹は紫音を睨み付けた。
「うるせぇな。」
否定しないと言うことは、少しはそう思ってくれているのだろうか。
「徹、あたしはやっぱり大学は辞めるべきじゃなかったと思うよ。シュリが悲しむと思う。」
そう言うと、徹はバツの悪そうな顔をした。
「でももう辞めちゃったんだからさ、長野で頑張りなよ。シュリのこと、しっかり支えてあげてよ!」
「おう、任せろ。じゃあ、そろそろ行くわ。」
改札を抜けようとする徹を、思わず抱きしめた。
「シュリにも言ったけど、あんたも負けんじゃないよ!辛い時はあたしに連絡してきなね。」
「わ、わかったから離れろ。」
「今更照れるような仲でもないでしょ!」
「違う。別所がすげぇ殺気放ってんだよ。」
「え?」
徹から離れて振り向いたが、紫音はいつもの穏やかな笑みを浮かべていた。