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知らない君

第1章 *





ぱしんっと、渇いた音がした。


待って、と伸ばした手を振り払われた。
痛くはなかったけど、ショックがでかい。
今の、俺の前におるは
見たことも無い冷めた目をしていた。

なんなん、いきなり。
何がどうしてこうなったんやろ。

訳がわからなくなる。
さっきまでは、普通やったやんか。


「、俺なんかしたんか。したんやったら謝る、けど…」


情けない声やな、と思った。
いつもの自分らしくない。
それほど、彼女に溺れて依存しとる。


「別に、なんも。私、用事できたから帰る。」


そう言って、リビングから出ようとする
彼女の手を掴む。今度は簡単に振り払われないように、少し強めに。


痛いのか、眉を顰め俺を睨む彼女も
初めて見る顔やった。



「離して。」


なんて、冷たい声なんやろうか。
おかしいやろ。
さっきはそんな声やなかったやん。
もっと、暖かくて甘くて。
今は、むっちゃ冷たくて聞いてるだけで
体が凍り付くようや。



「なんで、なん。」


戸惑いが声にも出てる。
やって、ほんまにわからへん。



彼女は、はぁと呆れたように息を吐いた。
そしてスッと俺の、耳元に唇を近づけた。



「遊び、だったのよ。すばるとは。」

「え…?」

「ふふ、あたしね実は既婚者なの。」

「…な、んやそれ…」

「旦那にばれそうだから、もうあなたとはこれっきりよ。いままでありがとう。…いい暇つぶしだったわ。」





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