第1章 私の気持ち
「うち、春奇んこと好きかも」
親友の波鳴は目を見開き、今にも笑い出しそうな顔をした。
「は!?火慧おまえあいつのこと好きんなったん!?ワロタ!」
波鳴はこらえきれず、笑い出した。
私と波鳴と春奇は同じ文芸部。
入部当時、波鳴とはすぐ仲良くなったが、春奇とはなかなか仲良くなれなかった。
なんだか冷めたところがあり、なかなか私たちと仲良くしてくれなかった。私たちが春奇のことをいじりすぎていたこともあるけれど、私たちはどうしても春奇と仲良くなりたかったから、そうでもしないと構ってもらえないと思い、そうしていたのだ。
だが二年生になって、春奇と私は同じクラスになり、以前より少し仲良くなった。夏休み明ける頃には、春奇の冷めた感じもなくなり、私も春奇のことをいじるのを控えるようになっていた。
その後、更に私と春奇は仲良くなり、修学旅行等でも一緒に行動したり、教室でもよく一緒に居るようにまでになった。
私たちはお互いを『親友』と思えるようになった。
そして、ある日
私は気付いた。
春奇に対する感情が
『友達』とは違うものになってきていた事に
私はいつしか
春奇とずっと一緒にいれたら
と思うようになっていた。
けれど私は、春奇への気持ちを隠そうと思った。
ふられて今までよりも悪い関係になると嫌だと思ったからだ。だけど、1人で抱えるには少し辛い想いだったので、私は親友の波鳴にだけは打ち明けようと思ったのだ。
波鳴は私に聞いた。
「なぁ火慧、あいつのどこが好きなわけ?」
春奇は確かに、その辺のパンピー女子に好かれるタイプではない。だけど私は好きになった。具体的に好きになった理由を聞かれると困るのだが、好きになってしまったのだ。
「どこかって聞かれたら困るけど、なんか知らん間に好きになってた」
「そうなんや。うちにできることやったら協力するから、まぁ遠慮せんと言いさ」
「ありがと」
私たちはその後、いつもと変わらぬ会話をして帰った。
次の日
「おはよ、火慧」
春奇はいつものように私に挨拶してくれた。
「おはよ」
春奇は私がこのささいな出来事で喜んでいることを知らない。そして知ることもない。
私はこの想いを押し殺して過ごす。
この想いが消えるのを待つのだ。
望みもしない この気持ちの消滅を。
待ち続けなければならないのだ。