第7章 ・お出かけします その1
「今度のお休みなのですが」
「ああ。」
「もし練習などがないならその、一緒にお出かけなどどうでしょう。」
勿論文緒は男子バレー部で川西から爆弾投下された事など知らない。故に義兄の次の言葉に目をパチクリさせた。
「どこへだ。」
まさか行く事前提の返しが来るとは思わなかった。練習があるから無理だと言われるか、そうでなくても急にどうしたと聞かれると思っていたのである。
「ええと、」
「出かけるのだろう。」
「そうなんですが。」
「行き先はどこだ。」
再度聞かれて文緒はここですと手に持っていたチケットを見せる。若利はそれをしげしげと眺めた。
「博物館か。」
「はい。」
「五色が静かな所に行きたがるといった事を言っていたが」
「何故そんな話になったのでしょうか。」
「なるほど確かに当たっている。」
「兄様、話がわかりかねます。」
「今日川西からお前と出かけたりしないのかと聞かれた。」
「あら偶然ですね、私も文芸部のみんなに言われました。」
「そうか。」
「遊山でいった事はないと言ったら兄様と仲がいいのにそれは良くないと。」
「こちらも似たようなものだ。」
「せっかくですからお誘いしてみようと思って申した訳ですが」
「丁度良いタイミングだったか。」
「はい。」
返事をしながら文緒は義兄がほんの少しだけ笑ったように見えると思う。
「そうある機会ではない。」
若利は言った。
「それでは兄様。」
「行くとしよう。」
文緒はつい嬉しさで高揚し勢いで若利に抱きついた。
「どうした。いつになく落ち着きがないな。」
言いながらも若利は満更でもないらしい。そのまま抱きついてきた義妹を膝に乗せて自分もまた抱き締める。勿論あの真顔のままでやるものだから超現実的な光景になった。
「申し訳ありません、つい嬉しくて。」
少し恥ずかしくなって離れようとする文緒だが若利は抱き寄せて離さない。
「謝る必要はない。」
若利は言って文緒の頭を撫でた。
「お前は大人しいのが過ぎる時がある。」
「兄様。」
「ただし」
「はい。」
「特定のゲームをしている時を除くが。」
「まさか兄様ともあろう方が私が連鎖を妨害して埋めちゃったのをまだ根に」
「事実を言ったまでだ。」
「絶対根に持ってる。」