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As well be hanged for .....

第2章 出会いは唐突に 契約は慎重に




次に少女の意識が戻った時には、少女にとてもなじみ深い景色だった。
ロンドンの街中にある自身のタウンハウス。
古めかしい佇まいの大きな屋敷は、近所の子供たちの間では幽霊屋敷と呼ばれている。

姉と二人で父の仕事を継いでからずっと、この屋敷で過ごしてきた。
数人のハウスキーパーと姉と静かに過ごしてきた大切な場所だ。
ホームは郊外にあり、今は母が一人で暮らしている。

見上げる天蓋はお気に入りの星の装飾がほどこされている物。
むくり、と起き上がり、ベッドの脇の呼鈴を鳴らし、廊下に向かってここのハウスキーパーを呼ぶ。
その状態のまま部屋の扉を見つめて数分、誰も来ない。
仕方なく寝巻のまま裸足で廊下に顔を出した。

「誰もいないの?」

右を見ても左を見ても人の姿は無い。
けれど、少女の鼻には紅茶の良い香りが届く。
どうやら人はいるようだ。
リビングへ向かって歩いていると、キッチンの方から背の高い黒い影が飛びだしてきた。

「おや、お嬢様。着替えもなさらずにこんなところに。」
「あなた……大人。」
「はい?私はセバスチャンと申します。」

白い手袋に執事服。
赤い目を柔和に細め少女にほほ笑む。
着替えを手伝います。と執事服は少女の背中を押して、少女はまた部屋に逆戻り。
少女は質問する隙すら与えられず、執事服の手によってあっという間にこの家に相応しいお嬢様になった。
そして、いそいそとエスコートされたのはリビング。

「ぼっちゃん。お嬢様がお目覚めになりましたよ。」

執事服が声をかける先には、夢か幻か昨夜の少年が父のお気に入りだったソファーに腰をかけていた。
ぐい。と執事服に背を押され、少女は一歩前へ出る。


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