第4章 入隊式の日
「あんなのと引き分けちゃだめですよ」
廊下を歩きながら、士郎が風間さんに文句を言う
「僕なら100回戦って100回勝てる、あんなパッとしない眼鏡」
「そうか?あんな遅い弾で空間埋めるとかいい手だったと思うが」
「あんなのトリオン無限ルールだからできた事でしょ?最後の大弾だって、一回フルガードしてから倒せばよかったんですよぉ!」
「そうだな、張り合ってカウンターを狙った俺の負けだ」
「もぉーしっかりしてくださいよ、風間さん!」
「お前はなんでそんなに偉そうに言うんだ…」
「ふふふ、士郎は風間さんが負けて悲しかったんだよね~?私とおんなじ、風間さん大好き組だもんね~?」
少し楽しそうに負けを認めた風間さんに、ぶーぶーと文句を言う士郎
士郎も風間さん大好きだから、悔しかったんだろう
「琥珀みたいな変態と一緒にしないでくれる?気持ち悪いんだけど」
「気持ち悪いってなによ!光栄に思いなさいよ!」
いつものように喧嘩をしていると、風間さんが楽しそうな顔で修のこれからを楽しみにしていた
風間さんらしくないその顔は、どちらかというと好きなものに目を輝かせる少年のような瞳をしていた
その後、そこらへんをブラブラと歩いていると噂話があちこちから聞こえてきた
「訓練で1秒切った新人がいるらしいぞ!」
とか
「射撃用訓練室の壁に穴が開いたじゃん?あれって、新人の女の子がアイビスで開けたんだって!」
とか
「B級上がりたての眼鏡が、風間さんと引き分けたらしいぞ!」
とかだ
勿論、それらの事は全部玉狛の遊真、千佳、修の事
自分の事ではないが少し友人として誇らしく感じる一方で、風間さんの引き分けについて私はものすごく否定したい
24敗してからの1引き分けだ、あれは引き分けではない。24敗1引き分けだ
「ねぇ琥珀ちゃん!風間さんが引き分けたってあれどうなの?」
「駿君までそれ言うの!?あれは尾ひれついてるだけ!」
「ふーん…本当のところは?」」
「玉狛の子が、24敗した後に引き分けしただけ!それも、風間さんが変に張り合ったからってだけだから…」
士郎のように文句を言ってしまう私に、駿君は少し不満げな声を漏らした
「迅さんの後輩…ねぇ……」