第3章 君が笑えるように
振り向くと、そこには
「やっぱり潤だ。
久しぶり。会いたかったよ?」
会いたかった、あの笑顔が。
ほんとは今すぐにでも抱きしめたいけど
人通りも多いこの道路、
抱き合ってる人がいる、
ましてや男同士なんていったら
どんな目で見られるかわからない。
ちょっとだけ距離をとって、
昔に少しだけ戻ったような。
でも、なんとなくぎこちなく。
「着いたよ。」
前と変わってない懐かしい雅紀の部屋。
雅紀の笑顔と一緒に
「おかえり」って言ってるようで。
つい笑みがこぼれる。
「まだ俺のこと好きでしょ?」
そう雅紀に聞かれて。
なんでそんなこと聞くのかと思うと、
「いや、まだ別れてないよねって思って。」
そんな答えが雅紀らしいと思って。
同時に、“まだ別れてない”っていう言葉が
ずっと雅紀と俺を
つなぎ止めてたんだなと思って。
「もちろん、ずっと好きだったよ?雅紀。」
ふたりの時が、また始まっていった。
─君が笑えるように─
Fin.