第7章 S×N【Melt.】
このまま溶け込むように、
翔さんとふたりの世界に
入り込めたらいいのに。
翔さんの隣に座って、
瞼をそっと閉じて、
「…ん?」
どうした、なんて
優しい声音。
…また、好きになる。
優しい、匂い。
香水とか、柔軟剤とかじゃなくて、
翔さんの匂い。
その匂いに包まれて、
幸せな気分になって。
……あぁ、そうか。
恋とは、こういうことか。
ひとつだけ、翔さんに
伝えたいこと。
「…愛してるよ。」
…誰にも、聞こえないくらい
小さな声。
「……俺も。」
ワンテンポ遅れて、
翔さんの声。
顔を上げる。
その瞬間、頬を包まれて
優しくキスをされた。
「……ばあか。」
また、小さな小さな声。
「お前もだろ。」
コツン、と小突かれて、
二人で顔を見合わせて。
ふたりの笑い声が、
いつまでも零れていた。
ー終わりー