第17章 初恋がロリコン男である件について【バク】
思わず振り返れば、明かりを照らすゴーレムを連れて、こちらへ駆けてくる男が一人。
「…バク?」
見間違いようがない。
バク・チャンだ。
「はぁッ…やはり、此処に…!はぁッいた、のか…!」
「…大丈夫?」
目の前まで辿り着くと、ぜいぜいと息をつきながら両手を膝について声を掛けてくる。
その台詞からして、ミアを捜しに来たらしい。
「なんで此処だって…」
「はぁ…今日は、"あの日"だからな」
どうにか息を落ち着かせたところで問い掛けてみれば、さも当然だと言わんばかりの顔が上がる。
「…忘れていた、訳ではないぞ」
しかしキリリと上がっていた形の良い眉が、唐突に下がった。
ミアだけでなく、バクにとっても忘れ難い日だ。
そこを軽んじているとでも考えているのだろうか。
ミアは肩を竦めると、気にしていないと笑顔を返した。
「大丈夫よ。私が勝手に訪ねてるだけだから、必ず来なきゃいけない理由なんてないし。寧ろ普段は立入禁止だからね、此処」
「それは、そうだが……毎年、来ていたのか?」
「まぁ。…私が此処で働く意味を、忘れないように」
「…仕事なら充分こなしているじゃないか」
「そうね。誰かさんが仕事をサボるお陰で」
「ぐ。……すまん」
まさか素直に謝罪されるとは。
予想外のバクの反応に、ぱちりと目を瞬く。
まじまじと見つめる先では、居心地が悪そうに立ったまま顔を背けている幼馴染。
言葉は素直だが、態度がまるで素直ではない。
他の団員の前ではそれなりの力量を見せているのに、ミアの前となると昔から彼は変わらない。
(バクだなぁ)
俺様で、プライドが高くて、負けず嫌いで、強情で。
くすりと微かに口元を緩ませると、ミアは持っていた明かりを掲げた。
「折角来たんだから、休みがてらバクも浸ってく?」
「…浸る、か?」
「そう」