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廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第17章 初恋がロリコン男である件について【バク】



スーツとストッキングを脱いで、楽な部屋着に着替える。
シャワールームは付いていないけれど洗面所はあるから、丁寧に時間を掛けてそこで化粧を落としていく。
メンテナンスはしっかりしておかないと、後々響くからここは重要。
平気で徹夜や化粧したまま寝落ちができていた昔が、羨ましくも恨めしい。



「はぁ…」



にしても…頭痛いなぁ…。

ハオ君に貰った頭痛薬は一時的にしか効いてくれなかった。
疲れた顔を鏡の中で見返しながら、ズキズキと痛む頭と体の倦怠感に、長年この体とつき合ってきたからこそ否応なしに悟る。

多分、これ風邪の初期症状だ。



「リナリーの風邪でも貰ったかな…」



そんなことはないだろうけど、今日一番疲れさせた出来事を思い出して更に溜息。

最近、季節の変わり目で気温変化も激しかったし。
多忙な体に蓄積した疲労が、風邪へと繋がってしまったんだろう。
若干の寒気を感じてぶるりと体が震える。
まずいなと思いつつ、上着を羽織るものの体温計には手を伸ばさなかった。

こういうのって、結果を知ってしまうと余計悪化するのよね。
風邪だと自覚した途端、体が認めてしまうというか。
それなら結果をはっきりとは出さずに、ただの疲労だと押し切って過ごした方がすぐ治る。
病は気からとも言うし。
風邪じゃないと言い聞かせていれば、割と仕事は乗り切れることに気付いた。



「明日は朝一で医務室に顔出しかな…」



副作用の少ない風邪薬だけ貰って、早々退散しよう。
ハオ君に伝わると余計心配させてしまうだけだし、平気な顔をしていれば気付かないだろう。
気付くのは多分、幼少期の私をよく知っているウォンとフォーくらいかな。

バクは───



「………」



…バクは、私が風邪だと知ったら。
リナリーの時のように、お見舞いに来ようとしてくれるのだろうか。



やれロリコンだと罵る癖がついてしまったけれど、バクがリナリーに惹かれるのも頷ける。
あの子は17歳にしては周りに気遣いができるしっかりした子で、だからこそエクソシストとして皆の為に体を張るあの子を、大人である私達が支えてやらなければと思う。

外見だけじゃなく、心も綺麗な女の子。
だからバクも惹かれたんだろう。

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