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廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第16章 ◆さよならの前に(神田/ルパン三世)



ザアアアア



フェレンツェ郊外。
土砂降りが続くコンクリートの道を、一台のミニバンが走っていた。
本来はクリーム色の優しい色合いの車体だが、今は激しい雨に打ち付けられくすんでいる。
雨は窓硝子も容赦なく打ち付け、暗い夜道を更に視界の悪いものへと変えていた。

車内には、ミニバンに体を押し込むようにして運転席と助手席に座る男が二人。
運転席には黒いシャツに真っ赤なネクタイ、青いジャケットと、派手なカラーで着飾っているもののしっくりと着こなしている男。
助手席にはスーツから靴まで、身に纏うもの全て黒一色に統一している、濃い髭を生やした目深に帽子を被った噛み煙草の男。

名はルパンと次元という。



「ガウティーリ家とジュリアー二家、両家の結婚を祝し、以下の品々をお送り致す。…か、」

「この間、拝借した書簡でな。とーんでもねぇお宝だろ?」



古い書簡を手に、刻まれた文字を次元が淡々と読み上げる。
今回、ルパンと共に雨の中ミニバンを走らせている原因は、その書簡にあった。



「総時代の陶磁器と絹織物。それにミケランジェロの絵画、か」

「特にその"迷える民と救済を待つ聖女"って絵はよ。現存するミケランジェロの絵にはねぇ幻の一品だ」

「確かにそれはとんでもねぇ。ただ、そんなもんとっくに誰かが見つけてんじゃねぇのか」



激しい雨が打ち付ける窓の外へと、次元の影を纏った黒い瞳が向く。
書簡に記されている宝の山があるのは、その名家の城だろう。



「ホテルだろあそこは」



しかし民家の一つも見当たらない寂しい林道の中、激しい雷に照らされ遠目に見えたのは、パンフレットにも載っているホテルだった。
名家の城は、今や公共のホテルへと変わっている。
そんな所に宝は現存し続けているのか。

丸めた書簡で肩を叩きながらぼやく次元とは相反し、ルパンは口元ににんまりと笑みを浮かべた。



「それが、ただのホテルじゃねぇのさ」

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