• テキストサイズ

廻る世界の片隅で【Dグレ短編集】

第10章 ※◆with はち様(神田)




「あくまとはなんですか?巨人と似た生き物なのでしょうか」

「巨人?何言ってんだ」

「こんなに大きな生き物、私、巨人の他には知りません」

「AKUMAは生物じゃねぇよ。悪性兵器だ」

「…悪性…兵器?」



爛々と興味を示すエメラルドの瞳をAKUMAの亡骸に向けたまま、ウリエの口からは問いが幾つも飛び出す。
面倒臭い、という感情を隠すことなく顔全体に浮かばせると、神田はウリエとは逆に興味なくAKUMAに背を向けた。



「いいから近寄んなって言ってんだろ。そいつは直に砕け散る。毒ガスが散布すんぞ、離れてろ」

「さんぷ…?」



言葉の意味がよくわかっていないらしい。
どこか知識が欠けているようにも見える、不可思議な女。
こんな林の奥にいたのだ、もしかしたら人里とは離れて暮らしているのかもしれない。

他人に興味など惹かれないのに、どこか気に掛かる女性。
そんなウリエにスタスタとAKUMAから足早に離れながらも、ついて来ない気配に仕方なく神田は振り返った。

朦々と上がっているAKUMAの毒ガス。
先程より薄ら赤味が増して見えるのは、濃くなっている証拠だ。
そこへ興味深く顔を近付けているウリエが見えたものだから、つい舌打ちが口の端から零れた。



「チッ…おい、だから離れろって言って─」



朦々と上がる赤い霧状のガス。
その向こうに、ゆらりと揺らぐ影が見えた。



「! 離れろ!」

「え?」



咄嗟に神田が声を張り上げたと同時に、ふっとウリエの頭に掛かる影。
何か、と見上げた先。
じゃこんっと機械が作動するような音が届いて、瞳に映し出されたのは丸い筒。
大きな砲の銃口だった。


/ 723ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp