第1章 ♦爪先が…
和也side
本格的な冬の訪れを前に、リビングにこたつをセットした。
こたつのスイッチを入れて、テーブルには缶ビールとツマミのスナック菓子…
あとはゲーム機の電源を入れて…
ピンポーン!
って…来客を告げる音。
暫く待つけど、再度鳴らされることは…多分ないだろう…
だってさ、出前を頼んだ記憶もないし、勿論来客の予定なんてない。
アイツしかないね…
玄関の方でガチャガチャっと鍵を回す音。
んでもって、ドアをバタンと閉める音…
ったく、乱暴だなぁ…
パタパタスリッパを鳴らしながら、アイツはやって来る。
またしてもドアをパーンて開け放つと、後ろ手でバタン!
いっくら強化してあるったって、ガラスはガラスだから…割れることだってあるっつーの…
ま、もしも割れるようなことがあったら、そん時は遠慮なく、高額請求回させて貰うけどね。
そのままアイツはキッチンに直行。
冷蔵庫を開け、缶ビールを取り出す。
俺は仕方なく、TVの正面の席から移動。
プシュッ…「ぷはぁ~、うめぇ♪」
って、はぁ?
飲んじゃってるし…
俺、まだ開けてもないんですけどぉ?
「ねぇ、相葉さんさぁ、いいんだけどさぁ、せめて乾杯ぐらいしません?」
言われて初めて気付いたのか、
「あ、ごめんごめん。
ほら、俺走ってきたから、喉乾いちゃってさっ」
って、言い訳よ…
爽やかな笑顔を振り撒きながら、俺の正面の席に腰を下ろしこたつに足を伸ばすと、まだ開いてもない俺の缶ビールに、手にした缶をぶつけ、
「はい、乾杯♪」
あ、そうですか…
呆れた俺は、床に転がったゲームのコントローラーを手にした。