• テキストサイズ

【ハイキュー!!】陽だまりの猫

第2章 4月







「…っだからあの日はなんも無かったって言っただろ!」

「お母さんの帰りがあと10分遅かったとしても…おんなじ事か言えるの?」

ピシャリと、静かに、力強くオフクロは言い放つ。
自分が熱くなってしまった事に気付かされた。

言葉を返せないでいると「まあ鈴ちゃんは可愛いから仕方ない事かもしれないわねー」なんておどけてみせるから余計に腹が立つ。

「それで、なんで家を出ねえといけないんだよ」

苛立つ俺を見て勝ち誇ったようにニヤリと笑ったあと、

「そうね…鈴にはいろいろとあったじゃない?」

オフクロは静かに話し始めた。

「家にも学校にも居場所が無い、地獄みたいな毎日から、アンタと研磨くんが救い出した。そのせいで今も鈴の世界じゃアンタ達の存在が凄く大きい。アンタ達の言うことには否定できないし、なんでも受け入れる。」

それはいつに無く真面目な話だった。

「…例えばだけど、アンタが死ねって言ったら鈴ちゃん死ぬんじゃないかな。馬鹿みたいだと思うでしょ?…それくらい影響力があるのよ」

「…そんなことッ!」


否定したいのに、それができない。
鈴はとても純粋で、優しい。そのせいで必要以上に自分を責めてしまうことさえある。

「まだ高校生の鉄朗が鈴の人生まで背負う必要は無い。それは私達大人に責任があるのよ」

真っ直ぐに俺を見据えるオフクロ。
こんな真剣な表情は初めて見る。

「それに鈴もアンタに依存しっぱなしじゃこの先心配でしょう。鈴のためだと思って兄離れしなさい。そんでアンタも青春でもしてればいいのよ、高校生なんだから」


最後だけなぜか、青春しろなんて馬鹿みたいなこと、さも当たり前の様にあっけらかんと言っていた。

でもオフクロの言うことが正しいのは何となくだが、確かにわかる。


「鈴が家に来た日、あの気持ちに変わりはないだろうね?」


鈴が家に来た日、オフクロに向かって俺は言ったのだ。
『俺が絶対、鈴を幸せにする』と。



「ああ。今でもそのつもりだ」



/ 162ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp