• テキストサイズ

跡部様のクラスに魔王様(Not比喩)が転校してきました。

第4章 心までもが洗われるかのような


 ――時を少し遡って説明いたしましょう。
「……という手順です」
「ふむ……まず手で大きな汚れを洗い落とし、次にこの装置を使って強い力を掛けて洗う、そして干して水を蒸発させると共に、日光による消毒、ということか」
「ええ。覚えました?」
 真剣な顔で言う魔王に、満足げに水戸さんは頷かれました。
「しばし待て」
 あくまで尊大な口調の魔王でございますが、そこは水戸さんは注意せぬことにしたようでございます。流石にその点について、水戸さんに不満を零すマネージャーもおりません――内心は、思っておられるかもしれませんが。
「メモ取ってもいいですよ」
「いや、これくらいなら暗算で組み立てられる」
「……暗算?」
 思わぬ言葉に首を傾げる水戸さんの前で、ぶつぶつと何やら呟いた魔王は、うむ、と満足げに頷きました。
「ならば、日光消毒以外は余ならば簡単に出来る」
「あ、じゃあ手分けして……」
「いや」
 全員の視線を集めて、魔王は大変楽しげで、誇らしげな顔で言ったのでございます。
「余、1人で大丈夫だ。確かこの布は、植物で出来ているものだったな」

「というわけなんですよ!」
 そう興奮気味に笑顔で話す水戸さんに、魔王は隣で満足げな笑みを浮かべております。
「大きめの隔離空間を用意し、洗う物を全てその空間にまとめた上で水で満たす。体液成分を水に溶け出させた上で、木属性を持たぬ土属性と水属性を消去。日光の殺菌成分の再現は光属性ゆえ魔王たる余には使えぬから、そこからは手で干して取り込まねばならぬがな」
「お、おう……」
 唖然とする跡部様の後ろで、ひょこりと顔を覗かせた向日くんと芥川くんが、「すげえええ!」と目を輝かせています。
「なぁなぁ、MPとか使わねーの?」
「えむぴい?」
「あ、魔力魔力!」
「ああ、余の無尽蔵たる魔力からすれば、この程度は指を動かすほどの手間でもないわ」
「すげー! ラスボス補正でMP無限に使えるやつだ!」
「味方になっても弱体化しないとか嬉C!!」
 はしゃぐ2人にぽかんとしていた跡部様ですが、はっと我に返って振り向くと、柔らかな笑みを浮かべて。
「おかげでマネージャーの仕事が楽になったみてぇだな。ディオグラディア、ありがとな」
 素直な感謝の言葉を受けて、仄かに己の頬が染まっていたことに、まだ魔王自身は気付いていなかったようでございました。
/ 29ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp