第57章 end story 〜クリスマス〜
映画を見終わると近くの公園のベンチへ腰をかけた。
「今日で何回目のデートかねー……」
とおそ松くん。
「そんなことより……はい」
と私は先ほどコンビニで買った肉まんを半分に割り、おそ松くんに渡す。肉まんも12月となれば似合う季節に感じてきた。
「おっ、サンキュー……」
とおそ松くんはお礼を言った。
「で、何回目のデートかって……うーん……」
私が考えていると、
「けど、一体何をデートって言えばいいのか分かんないよな。学校の放課後、一緒に飯食うのはデートに入るのか?」
確かに、文化祭が終わった後の片付け、その後11月に行われた文化祭の後夜祭イベントに向けての準備、12月のテストなど補習など……おそ松くんといた時間は多いものであったからだ。しかし、こう出かけたのは、あの日映画館へ行った日以来かもしれない。
「どうなんだろうね……あっ、そうだ」
と私は鞄から、
「はい、クリスマスプレゼント」
とおそ松くんに袋を渡した。
「わぁ! なんだろー……」
と開ける。中には赤の手袋。
「すっげ。松野ちゃんの手作り?」
とおそ松くんは聞いてきたが、
「そんな時間あるわけないじゃん。けど……もらってくれたら嬉しい」
と言った。まさか手作りかと聞かれるとは思わなかった。来年はまた考えよう。
「そんなこと言うなよー。もうプレゼントあるだけでも嬉しい。あっ、そうだ。ねぇ、付けてつけて」
と嬉しそうに私に手袋を持たせ、手を出してきた。
「はいはい」
と言いながら私はおそ松くんの手に手袋をはめていった。改めてまじまじと見てしまうおそ松くんの手。
(男の人の手って……こんなに大きいんだ……)