第11章 白に指環@影山飛雄
「すっ、菅原さん」
「お、なんだ?影山」
部活の帰り。主将の澤村が肉まんを奢ると言い、一同は坂ノ下商店へと向かっていた。
田中や西谷、日向が走って坂を下っているのを後ろから笑って眺めていた菅原に、影山が話し掛けたのだ。
「その、美心…の事なんですけど…」
「なんだ。バレーの事かと思った」
「スンマセン!」
「良いって!話すべ」
影山は足取りを緩め、声を潜めて話した。
「実は今度、——」
「デートするんです」
澤村に奢ってもらった肉まんをかじりながら、美心は顔を赤くした。
清水と谷地は、近くの影山を盗み見て、暫し硬直していた。
「えっ、……デデデデデデ、デート⁉︎」
「仁花ちゃん、そんなに驚く?」
クスクスと笑う清水につられ、美心も口許を綻ばせた。
「で、何処に行くかは決まってるの?」
「あ、それは飛雄くんが決めてくれるって言ってたんですけど…。
私はどうしたらいいんでしょうか。何かする事とか…」
影山は疎か、デートというものを経験した事がない美心は、何をすればいいか分からなかった。
当日にあたふたするのはいけないと思いやるべき事を探しているのだが、自分1人では何も分からなかった。
「デートかぁ……私もした事ないけど、雑誌とかによくそういうの載ってるよね」
「服とかには気をつけないとね。例えば……——」