第8章 ドライヤー@赤葦京治
「…桐谷さん。桐谷さんは、好きな人いますか?」
「?うん、いるけど…」
「俺もいます。
…それで、今の桐谷さんの言葉で…ちょっと自惚れてます」
赤葦はまた赤面し、恥ずかしさを振り払うようにドライヤーのスイッチを入れた。
「…——した」
ブオオオォォ…
「…え?」
カチッ
「…ずっと、赤葦くんの事見てました」
…カチッ
ブオオオォォ…
「…それは、告白ですか?」
一瞬の沈黙。鏡の中の美心は、口許を綻ばせて頬をピンクに染め上げていた。
「…はい」
赤葦は目を見開き、それから微笑んだ。
…想いは、通じた。
「…なら」
カチッ
赤葦は、ドライヤーの熱を持ったその髪に優しく口付けた。
「赤葦くっ…」
「これが、俺の返事です」
美心は幸せそのものの笑顔を見せ、くるりと赤葦に向き直る。
「よろしく、京治くん!」
「こちらこそよろしくお願いします、美心さん」
嬉しそうに笑う美心がたまらなく愛しくなり、赤葦は彼女を胸に抱き留めた。
fin