第2章 お弁当
先生が初めて男のために作った弁当。
俺だけのために作った弁当。
嬉しくてにやにやが止まんない。
しかも今日限定じゃなくて、
明日も明後日もこの先ずっと続くって想像しただけでやばい
先生が作ってくれた弁当を宝物のように大事に持って
自教室にスキップで向かう。
「みんなーおっはよーう!」
語尾に記号の音符でもつきそうな声で
教室のドアを開ければ弟たちが集合していた。
「おっ、なんだなんだ集まっちゃって。どったの?」
「ねえ、おそ松兄さん、朝どこ行ってたの?」
トド松の質問に「先生の家!」とうっかり答えそうになり
ぐっと言葉を飲み込む。
もしバレたらたぶんこいつらも
一緒に送り迎えするとか言い出しそうだし、
一番避けたいのが弁当食われそう…。
「どーせまた保健室でしょ?」
「ん?あー、うん。」
一松に合わせてみたものの反応が微妙だったからか
他の兄弟たちは顔を見合わせる。
「んで、なんで皆そろってんの?」
つっこまれる前に平然を装って話題を変えることにした。
するとまた兄弟たちは顔を見合わせて
代表してチョロ松が口を開いた。
「なんで今日弁当作ってもらわなかったの?
…それと、その弁当、何?」
「うゎはぁー!おいしそーな匂い!!
これ、家の匂いじゃないね!」
「まさか…彼女ができた、なんてこと…ないよな?」
まずい…。
「ブラザー…?」
「おそ松兄さんに彼女…。」
全力で頭フル回転させたけど
この悪魔の兄弟からどうやって言い逃れしたらいいか
まったくいい案が思い浮かばない…。
「で、どうなの。彼女から貰ったわけ?」
「……うん。」
諦めて貰ったと認めてしまった。
兄弟たちの表情は信じられないといった顔をしている。
「誰誰ー?!!?!かわいー子?!」
「あー…えーっと」
質問攻めをされていると始業のチャイムが鳴った。
「ま、いつかお前の口から話してくれる日を待ってるぜ…」
そうカラ松が言うと皆もそんな雰囲気になって
各自自教室に帰って行った。
今回だけはカラ松に感謝しよう。