第2章 お弁当
7時20分…約束の時間の10分前。
待ち合わせはいつも5分前に着くようにしているけれど、
いくらなんでも早すぎかな…。
そんな事を思いながら低めのヒールを履く。
待ち合わせ時間は決めたのに、
待ち合わせ場所ははっきりと決めていなかったので
マンションの下で待つことにした。
『ガチャッ…』
「!、松野くん!!」
扉を開けると松野くんが扉の前で胡坐をかいて
野良猫と猫じゃらしで遊んでいた。
「いつから待ってたの!?」
「んー?今来たとこだよ?」
今来た人が扉の前で胡坐をかいて猫と遊んでる訳ない…。
「インターホン鳴らしてくれれば良かったのに…」
「この猫、一松がかわいがってんだー!」
そう無邪気に笑って猫を抱きあげた。
喧嘩強く不良で有名な松野くんだけど、
こういうところはすごく子供っぽくて可愛い。
「ていうか、先生こそ出てくるの早くない?まだ20分だよ?」
「待たせたら悪いかなって思って…。」
「ふーん、本当は早く俺に会いたかったんじゃない?」
「ち、ちが…!もう、からかわないで!」
そんなことを話しながら階段を下りて
マンションを後にした。
松野くんのこういう人をもてあそぶようなところが
苦手というか、反応に困るというか…。
「それってもしかして俺の?」
松野くんは私の右手に提げている紙袋を指した。
中身は自分のお弁当と松野くんに作ったお弁当だ。
「う、うん…なんかドキドキする…。」
「なんで?料理得意っぽいじゃん。」
「男の人に自分の作ったもの食べてもらうの初めてで…。」
「~!!、なんか、それすっげー嬉しいんだけど!!」
目を輝かせながら「それ俺が持つ!!」と
喜んでいる松野くんを見て口に合うか心配だけど、
思わず口角が上がった。
「俺、楽しみすぎて早弁しちゃう!!」
「ええっ…ちゃんとお昼休みに食べてね…」
松野くんなら本当にやりかねないと苦笑いをした。
程なくして学校に着いた。
あのマンションを選んだ理由は駅が近いのはもちろん、
学校まで徒歩10分弱だからとても助かる。