第6章 風邪
「あ、お弁当…」
朝ぼうっとしてて作り損ねてしまった。
私は食欲湧かないし、松野くんには購買で食べてもらおう。
『お弁当作り忘れちゃったから、購買で食べてね。』
メールでそう伝えると『了解!大丈夫?』と秒で返信が来て『大丈夫だよ。授業集中!』と返信した。
実際薬の効果でなんとか保てている。
仕事を着々とこなしてあっという間にお昼になった。
「はぁ、はぁ、先生!」
いつもより遅く来た松野くんは息を切らして購買のビニール袋を持っていた。
良かった、松野くんお昼食べれて。
いちごのゼリーなんて買っちゃって可愛いなぁ…
「はい!」
「えっ、」
松野くんは袋からいちごのゼリーを取り出すと「これ人気なんだよね~」なんて言いながら鼻の下を擦りニッと笑った。
私のために…?
「ありがとう…でも、私はいいから松野くん食べて?」
「? 先生、いちご好きでしょ?あ、もしかしてゼリー苦手?」
「そんな事ないよ!大好きだけど…食欲が…」
小さな声でもごもごしていると松野くんはいっただっきまーすと手を合わせ、焼きそばパンを食べ始めた。
風邪だからゼリー。松野くんなりに考えてくれてるんだろうし、今回は甘えよう。折角買ってきてくれたんだし。
「いただきます。……美味しい!」
「だろー?!あ~苦労して取ってきた甲斐があった!」
お昼のチャイムの後の購買競走は激しいし、何回か買いに行ったことあるけど、いちごのゼリーなんて見たことない。
「松野くん、ありがとうね。」
「~っ、うん!!!」