第8章 去れど一難
「クルーになれ」
と言ったのはまた変わらない表情。
私の感情もまた、変わらない。
この人は能力を、人を。
なんだと思ってるんだ。
貴)「お断りします。
この能力を欲しい理由なんて知りませんけど、渡す気も仲間になる気もありません。」
わずかに睨んで言う。
そう言った私を変わらない冷たい目で見下して、口を開く。
ロ)「…頼むのは次で最後だ。
クルーになれ。」
貴)「何度頼んでくれても構いませんよ?
“お断りします”。」
少し、微笑んで答える。
すると冷たい目は私を見下して。
「そうか」の、ただ一言を呟いた。
瞬間。
貴)「ぁ…っ……グッ…!!!??」
心臓が潰れるような痛みに襲われる。
イタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイイタイクルシイ!!!!!!!!
ロ)「寝てる間に少し貸してもらった。」
胸を押さえながら必死に上を見上げると、ローの手に、ばくばくと動く心臓が握られていた。
そして胸を押さえている手の感触に血の気が引いたのを感じた。
穴が、あいてる。
心臓があった場所に、ぽっかりと…
はくはくと、息がまともに吸えずにいるとまたギュッと握られて反射で体が跳ねた。
貴)「ゃ、め………!!!
っあぁぁアあぁぁァアぁ!!」