第7章 seven

そこでふと浮かんだ疑問。


“これまでに付き合った男はいたのだろうか”


てっきり俺が初めてだとばかり思っていたけど、あいつの口から“そう”告げられたことは無い。


もし居たのなら、それはどんな男だったのか。


真面目か？チャラい奴か？


優しかったのか？意地悪なやつだったのか？


１度考えるとそればかりが気になって、腹の底をドロドロとした感情が渦巻く。


「アイツに付き合ってた奴はいたのか？」


「いや、俺らの知る限りでは…中学の事までは分からないですけど…」


俺の知らない、藍原。


あぁ、ムカつく。


俺以外に甘い顔を向けたのだろうか。


あの可愛らしい声で好きだと、愛を囁いたのだろうか。


初めてを捧げたのは俺じゃ無いのだろうか。


「そんなに気になるなら本人に聞いたらどうですか？藍原ならきっと答えてくれると思いますけど。」


そうだろな。あいつは答えてくれる。


そしたら俺も話すことになるだろ。


ハルの事はもう吹っ切れたはずなのに、知られたくないと頭が拒否するんだ。



俺はどこまでもズルイな。