第2章 恐れていたこと
「まぁ、辛いよなぁ。お前にも腹の子にも罪は無いわけだし。」
先程まで淡々と話していたのに、急に同情するような言葉をかけてきた。
「1つの命だからね。」
私はお腹に手を添えた。
「ごめんね…。」
この子は何も悪くない。
私がもっと抵抗すればこんな事にはならなかったかもしれない。
そう思うと涙が溢れた。
すると、黒川さんが私の顔を覗き込んだ。
「レイプした奴が憎いか?」
「当たり前じゃん…。」
「それなら、そいつ俺が消してやろうか?」
黒川さんは口角をつり上げてはいるが、目に感情が無かった。
笑って言うことでもないし…この人、やはりどこか変だ。
黒川さんに対し言いようのない恐怖心を抱いた。
だいたい"消す"なんて…そんなことをしたら黒川さんは殺人犯になってしまう。
「なに言ってるの…いくら憎くてもそんなの駄目だよ。」
「あっそう。」
黒川さんは一瞬で無表情に戻った。
「じゃあ俺、仕事あるから帰るわ。明日迎えに来る。」
そう言って黒川さんは立ち上がった。
ふと、黒川さんの職業が気になった。
「ねぇ、黒川さんてなんの仕事してるの?」
「守秘義務があるので言えませーん。」
黒川さんはふざけた口調でそう言って、部屋から出て行った。
黒川さん…彼は一体何者なのだろう…。