第1章 エピローグ
廃ビルの屋上で砂埃が舞った。
この街の中心から少し離れ、静かな住宅街の中にそのビルは息を押し殺すようにして建っていた。
なぜ未だに取り壊されていないのか、そんなことを考える人がいないくらいひっそりと、目立つことがない不思議なビルだった。
そんなビルの屋上で一頻り砂埃が落ち着いた頃、階段に向かう錆びて朽ちた扉の前に少女が膝を抱えて座っていた。
「・・・。」
口元が動くが、微かに空気が揺れる程度で音にはならない。
少女はゆっくりと空を見上げた。どこか儚く、諦めたような、けれど愛おしそうに空を見上げた。
月が雲の切れ間から覗く。屋上の端からゆっくりと照らされ、少女のいた位置も光に包まれた。少女はもう其処にいなかった。