第2章 鰐の丸めかた
「てめぇ……どこまで知ってやがる……!」
額に青筋を浮かべて汗を滲ませるクロコダイルの反応にシャルラは微笑んだ。
「わりとなんでも。アブナい粉使ってることとか、ユートピア作戦とか」
シャルラが浮かべた笑顔は無邪気以外の何物でもなかったが、台詞とのギャップのせいで不気味さを一層際立たせている。
クロコダイルはかなり焦っていた。なぜシャルラがそれを知っているのか、どこからその情報が洩れたのか。まだ作戦実行には遠いというのに、突き止めてそのルートを潰さなければ自社は危険だ。
「安心して。おれ独自のルートで調べた事だし、他のやつがおれと同じ方法で情報を手に入れるのは不可能だから。」
クロコダイルは愕然としてシャルラを見た。考えを見透かされたようで落ち着かない。
シャルラは言い終わると再び踵を返して、今度は出口のドアへ歩いて行く。
「けど…あーあ、意中の彼にフラれちゃったからもう生きてる意味もないし、海軍に自首しよっかなー。ついでに、持ってる情報ぜーんぶ海軍に渡しちゃおっかなー!クロコダイルの七武海生命も終わるし、あわよくば同じ牢屋に入れるかもしんない!!」
芝居がかった口調は明らかなクロコダイルへの脅し。
クロコダイルは悟った。こいつが最初から用意していたこちらの選択肢なんて、『Yes』か『はい』くらいしかなかったのだと。
クロコダイルが理解したことを理解したシャルラは、ドアの前でクロコダイルに振り返った。
「ね、もう一回答え聞かせて。
おれと、付き合ってくれる?」
クロコダイルの返答は、どう足掻いてもひとつしかなかった。