第7章 〜現世〜
朝、何処と無く騒がしい屋敷の物音で目が覚めた私は、ふと目をあげた。
屋敷の主はとうに起きていて、けれど私が起きるのを待っていてくれた様だった。
「…おはよ。ごめんね、勝手に寝ちゃって」
「…構わぬ」
「なんか騒がしいね。…現世の事かな」
「何か知っておるのか」
少し目を厳しくさせた白哉に、昨日感じた霊圧の話をした。
話を聞いた白哉は、そうかと呟いたまま、黙ってしまったけれど。
じっと見上げていると、根負けした様に溢した。
「夜半、隠密機動から伝令があったのだ。現世に魂魄を吸収する化け物が大量に現れたと」
「その事、皆何処まで知ってるの?」
「まだ詳しい事は分からぬが…バウントと呼ばれる人の突然変異した者達が現れたと聞いている」
「そうなんだ」
白哉は、バウントの詳細はまだ知らない様だった。
かつて尸魂界が産み出してしまったという事も。
彼等の能力の詳細も。
どうしようか迷ったものの、聞かれるまで黙っていようと決めた。
情報収集能力だって大事だし、隠密機動が動いているのなら、余計な事を言わないほうが良い。
下手に何もかも手を出してしまって、もし私がいなくなった時、機能しなくなってしまうのも困る。
それに、多分首を突っ込む事を、総隊長が嫌がるだろうと予想して。
それでも、面白そうなら行こうかな。
現世に行ってみる口実にはこれ以上ないし。
なんて、密かに計画を企てていると。
「玲。よもや現世に出向こうなどと考えてはいまいな」
厳しい目で釘を刺されてぴくりと震える。
どうして、白哉は私の考えている事が分かるのだろう。
そんな疑問を口に出来るはずもなく、視線を彷徨わせ。
ふと思い付いて、するりと彼の首に腕を絡めた。