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ウェディングプランナー(R18) Hi-Q

第9章 和婚式





そんな気持ちで迎えた今年の卒業式。
とにかく、早瀬と間違いをおこさずに
この日を迎えられてホッとした…
というのが本音なのだ。





卒業式の後、
案の定、一人で体育教官室にやってきた早瀬。

『岩泉先生。』

手にしている卒業証書を結んだ赤いリボン。
そこだけやけに華やかに見える。

『卒業しちゃった。
結局、振り向いてくれませんでしたね。』

『当たり前だろ。お前は大事な生徒の一人だ。』

『でも、明日からは生徒じゃないですよ。』

『明日からは、教え子と先生。
早瀬は今から大学で、
いっぱい遊んだり恋したり出来るんだから、
出会いを大切に、な。』

『…先生、握手。』

握手くらいなら。

初めて、早瀬に触れる。


細くて冷たい手。
この手を離した瞬間が
俺たちそれぞれの、次へのスタートだ。

そのまま抱き寄せたくなる気持ちを
死に物狂いで封印して、手を離す。

『元気でな。』
『…先生も。』

ガラガラ、と閉まるドアの音を聞いて
体の力が抜けた。

窓から見送ろうと
立ち上がりかけたが、やめる。

きっと早瀬は、この窓を振り返るだろう。
その時に目でもあってしまったら。
アイツの次への一歩を邪魔してしまう。

俺の気持ちなんか、どうでもいい。

早瀬が、
ここで過ごした3年間を
楽しかった思い出にしてくれれば。

その中のどっかヒトコマに
『体育のなんとか先生に
恋した時期もあったっけ』と、

生きてる間に
一回くらい思い出してくれたら。

教師と生徒の思い出は、
そのくらいでいいんだ…



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