第27章 ウェディングプランナー
カチカチカチ…
大将が目の前で菜箸を鳴らして言う。
『あーもうっ、
目の前でイチャコラしやがって!
呼び方なんざでそんなに騒ぐな!
あ?黒尾さんはねーちゃんのこと
何て呼びたいんだ?』
『…アキ。』
『ねーちゃんは?
なんて呼びたい?』
『…黒尾、さん?』
『じゃ、それでいいじゃねーか。
大騒ぎしておきながら、結局、
一番シンプルなのに決めやがって…
見てたら俺まで、
女、作りたくなってきたぞ!』
『お、4回目、目指す?!』
『…4回目って、何?』
黒尾さんと大将は
目をあわせて笑ってる。
『大将、そういや
前から聞こうと思ってたんだけどさ、
ここ、なんで店の名前も"大将"?』
『俺の名前が"大田 将一"だから。』
『えーっ?!』
『T、S、N だな。』
『なんだ、それ。』
『あ、はい、私、わかった!
T 大将だって
S センス、
N ねぇじゃん…じゃない?!』
『そうそう(笑)』
『ばか!親からもらった大事な名前、
看板に使うんだぞ、立派な親孝行だ!』
仕事帰りの、こんなヒトトキ。
すごく、心があったかい。
『ちょ、トイレ。』
黒尾さんが、席を立つ。
おでんをいじりながら、
大将が私に言った。
『よかったな。』
『はい。』
『あんな楽しそうな黒尾さん、
初めて見るもんなぁ。
あの人、あぁ見えて気ぃ遣いだからさ、
くつろがせてやってよ。』
『はい。』
黒尾さんが戻ってくる。
『そろそろ帰るか?』
『あ、じゃあ、あたしもトイレ。』
トイレから戻ると、
もう、勘定が済んでいる。
『黒尾さん、割り勘にして下さい。』
『次から、な。今日のは、誕生祝い。』
『ねぇちゃん、こういう時は、
ありがとう、って素直に言いな。』
『あ、ありがとう、ございます。』
『じゃぁな、大将。』
『またおいで、アキちゃん。』
『こら、大田 将一!
俺の彼女の名前、気軽に呼ばないっ!』
笑い声がおいかけてくる中、
暖簾をくぐって店を出る。
…この道を黒尾さんと歩くのは、2回目。
『ほら。』
黒尾さんが、手を出す。
『この前は、
この道でフラフラして危なくて。
あん時は"手繋ぎ禁止令"が出てたから
ヒヤヒヤして見てたけど。』
私の左手を繋いで。
『行こ。手、離すなよ…アキ。』