第27章 ウェディングプランナー
ふぅ。
黒尾さんがゴミまで持って
出掛けていったあとの部屋…
へんなの。
昨日の朝も同じだったはずなのに、
なんだかすごく静かに感じる。
夕べ、思いきって電話してから
まだ半日しかたってない。
だけど、いろんなことが変わった。
黒尾さんと、つきあうことになった。
…本当だろうか。
未だに信じられないんだけど。
…仕事、行かなきゃ。
現実と夢の境目がわからなくて
頭を振りながら
出勤の準備をすることにした。
洗面所に行くと
昨日はなかった青い歯ブラシ。
洗濯物のかごに、
黒尾さんのジャージ。
…あ、やっぱり現実なんだ。
嬉しい思いとともに
チクリ、と痛む過去の傷。
2年前の昨日…誕生日…の夜、
前の彼の私物を、全部、捨てたっけ。
あのときも、
部屋のあちこちに
いつの間にか増えていた
彼の存在を思い知らされた。
終わらない恋は、ただひとつ。
黒尾さんが、そうなのかどうかは
まだ、わからない。
ただ、
私から黒尾さんを嫌いになることは、ない。
終わるとしたら、黒尾さんが私に飽きた時。
…ぞっとする。
失恋のあの痛さを思い出して。
20代は、それでもまだ
次に向かおう、と思うことが出来た。
30になった今、
"次の恋"という言葉が
とてつもなく遠くに
いってしまった気がする。
でも。
…ゆうべ、電話をかけた時の気持ち。
決めたから。
次は、なくていい、って。
もしこの先、黒尾さんにフラれたら
私は本当に、独りの人生を選ぶ。
そんな覚悟で電話した。
みんな、同じ。
恋の始まりは、勇気。
始まらなければ
終わりもないけど
始まらなければ
実ることもない。
だから、後悔のないように。
信じ抜く。
愛し抜く。
…歯ブラシが2本、並ぶ景色を
ずっと見ていられますように。
歯ブラシなのに、
つい、両手をあわせて
拝んでしまった…
さ、
行こう。
私の一番の居場所へ。