第29章 お姉様？お姫様？＿＿＿＿彼女だよ　朱桜司

「お、お姉様はお姉様は………」


司くんは取り乱して、綺麗に整った髪をクシャッと握りつぶす。


「司の、司の＿＿＿＿なのに」


消え入りそうな声を発して、ヨロヨロとどこかへ去ってしまった。


残された私達は黙って顔を見合わせた。


「どうするの、イズミン。嵐お姉ちゃん」

「さあ？これで満足でしょ？かさくんがお姉様お姉様って呼んでてもちゃーんと彼女って認識されてるんだって。」

「でもちょーっとやりすぎたかしらあ？まあ、そんな仕事やる気ないんでしょう？」

「……え？…あー……うん」

「何よ、歯切れ悪いわね。」


やりたくないにはやりたくないのだが、どうも相手側がしつこい。断れるだろうか。


「あんた、頼まれたら断れないもんね……。相手側はそれ知っててしつこく言ってくるんじゃない？いっそのこと、かさくんに破産に追い込んでもらえば？」

「イズミン、他人ごとだからって適当すぎ…」

「でも、取りあえず仕事をやるやらないは置いといて……司ちゃんを何とかした方が良いんじゃないかしら？」


嵐お姉ちゃんの言うとおりだ。どこに行ったのだろうか、彼は。


取りあえず、本来は部活の時間だし部室に行ってみよう。