第7章 建前と本音
朝食の後、加州は春香を連れて、足早に部屋を出た。
庭まで行き、深呼吸すると、春香に勢いよく頭を下げた。
「ごめん!昨日…酔っていたとはいえ、春香の気持ちも考えないで…」
「な、なんでミツが謝るの?あれは、私がいいって言ったんだし…」
「それでも!」
加州は、春香の言葉を遮り、顔を上げて話を続ける。
「それでも…酔った勢いに任せて、今の春香の気持ちにつけ込んで、自分の気持ち全部ぶつけて、そしたら、俺の事見てくれるんじゃないかって…思っちゃったんだ…」
「ミツ…」
二人とも、せつない顔をしている。
春香は、深呼吸して、そっと加州を抱きしめた。
「春香!?」
「あのね、ミツ。私も、酔ってて、寂しい気持ちに任せて、理性飛んでて誘ったんだから、共犯者だよ。それにね、やっぱり、ミツの気持ちは嬉しかったんだ。ずっと私の事を見ててくれてたんだって。だから、ありがとね、ミツ。大好き。」
そう言われ、泣きそうな気持ちを抑えて、ぎゅっと春香を抱きしめ返した。
「春香のバカ…今、こんな事されたら勘違いしそうになるじゃん…」
「ミツは、こんな事で勘違いしないかなって。だって、私と、ミツの中でしょ?」
確かにと照れ笑いを浮かべながら、加州は春香のおでこにおでこをコツンと合わせた。
「…なら、これまで通り、近侍で傍に居てもいい?」
「もちろん!私の近侍を出来るのは、ミツしか居ないよ。」
「ありがと…そんな、春香が、大好きだよ。だからって、今すぐに俺を好きになってとは言わない…でも、俺の気持ちを知っといてくれたら、嬉しい。」
「分かった…ありがとう。ミツ。」
二人で、照れ笑いを浮かべた。
「あいつらは、何をしてるんだ?」
「仲直り、って感じじゃねぇか?ほら、まんば。やたらと見るもんじゃねぇ。行くぞ!」
遠目に見ていた山姥切が、和泉守に促されて馬の世話へと向かって行った。