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制服少女と赤瞳少年【HP】

第19章 嘘つきはだれ


見たくない、少女は逃げるように後ずさる。

しかしそれが仇となったのだ。

布をとるため近すぎた鏡との距離に間が生まれると鏡がぐにゃり、と渦巻き歪む。

「やめて……っ!」

悲痛な叫びはものともせず鏡は変化する。
少女の青白い顔は鏡と共にぐにゃりと歪み掻き消えた。
そして一人の女性の姿がそこにはあった。
女は少女を見て無感動な表情をしていた。
少女は酷く怯えたような表情で固まっていた。
よく似た顔の作りの二人が異なる表情で鏡越しに対面していた。

「い……や………」

少女の呟きは浅い息とともに吐き出され虚空に消えた。
女は微笑むと次の瞬間には隣に見知らぬ男が立っていた。
否、見知らぬ男ではない。少年だ。大人になった少年に違いなかった。
黒い髪に彫刻のように整った造形、滑らかな肌に何より赤く紅く輝く瞳が少年であると物語っている。

少女の知る能面のような顔でもなく、蛇のような鼻でもない、美しすぎる青年は顔のよく似た女と鏡の中で微笑みあい、腕を組んでならんでいる。

「リ…ドル……君」

少女の声に反応したのは誰もいなかった。女が嘲るような、憐れむような微笑を少女に投げかけたこと以外は。
青年の雰囲気は冷たくとも微笑みあう二人は穏やかな空気に包まれているようだった。

もう少女は嘘がつけない。
どんな未来になろうとも少女は少年とともにいたいと望んでいるのだった。



【嘘つきはだれ】
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