第58章 【王者の恩返し】　その5

「俺は俺は。」

一方ノリノリで聞く天童に、もちろん少女は答える。

「天童さんは私も右に打つんちゃうかって思たら左にきてたんを予測して止めてはったんが凄いなって。編集してた時もなんでわかるんやろって無茶苦茶不思議で。」

天童はうんうんと大変満足げである。

「あ、あと白布さんも」

言及されると思っていなかったのか、白布が僅かに目を見開く。

「目立たへんけど確実に牛島さん以外にもトス上げてはって、仕事できる人ってつまりこんな感じなんやなって思て見てて、白布さんってほんま信頼されてるって改めてようわかりました。」

白布は美沙をチロッと見て

「薬丸に褒められても嬉しかねえよ。」

とそっぽを向いたが、何か気づいた天童がアヒャヒャヒャと笑い出した。

「賢二郎、顔赤いジャン。あとありがとねー、ままコちゃん。」

まだまだ美沙の語りは続く。烏野、白鳥沢共にチームの連中は殆どが面白がって話を聞いていて、義兄の力は苦笑して見守っている。

「そうそう、川西さんは天童さんとちゃう感じで、相手がどう動くかよう見てブロックしてはったし」
「そう、ありがと。」
「川西さん、いってることとポーズが合ってないです。」

五色が突っ込んだとおり、淡白に言っている癖に川西の片手は小さくガッツポーズをしているしこちらも少し顔が赤い。

「あ、大平さんもすごいなって。」
「そうかい。」

話を振られた大平は静かに反応する。

美沙は頷いて

「牛島さんが攻撃に専念出来るようにしてはったでしょ、これも素人かてわかりましたよ。サーブが牛島さんの方に来たらフォローしたり、スパイクすると思たらフェイントしてはったでしょ。」
「思うよりよく見てるんだな。」
「まさに頭脳やなって。」
「ほめ過ぎだよ、でもありがとう。」

謙虚に言う大平であるが、微笑んでいる。
こちらもほんのり頬が上気している辺り、満更でもなかったのだろう。
ここで美沙は一度水を飲むが、程なく再開する。