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【ハイキュー】エンノシタイモウトこぼれ話

第43章 【王者の命】その3


「初めまして、烏野高校1年の縁下美沙と申します。お話は聞きました、今日はよろしくお願いします。」

義兄共々深々とお辞儀をして顔を上げると鷲匠がじぃっと見ていた。

「お前か、電脳娘ってぇのは。」
「はい。」

思えばこの時よく目を合わせられたものだと美沙は思う。
本来ならウシワカさんは何を言うたと脳内で突っ込むところをスルーしてしまうくらい緊張していたのに、だ。
後で聞けば義兄の力もよく出来たなと思ったらしい。

「鷲匠だ。いきなり呼びつけて悪いがよろしく頼むわ。」
「はい、こちらこそ。」

ぎこちなく美沙は微笑んでもう一度お辞儀をし、斉藤に機材はこっちですと促された。


美沙は知らなかったがほんの少しだけレアなことがあった。

「おい、烏野の6番。」

チームの方へ戻ろうとした縁下力は鷲匠に呼び止められた。

「は、はい。」

何だろうと力は思う。先の挨拶の時点では義妹が何かやらかしたとは思えないのだが。
そんな力の不安など勿論知らない鷲匠は静かに口を開く。

「あの娘っ子」
「はい。」
「本当に妹か。」

初対面の多くが聞いてくるポイントだ。顔は全く似ていない、加えて義妹の基本は関西弁、標準語を使っていてもその抑揚が抜けきらないのだから当然だ。
力もすっかり慣れてはいる。けれどもまさか白鳥沢の監督にまで聞かれるとは思わなかった。

「間違いなく自分の妹です。」
「そうか。」

ビビりながらもはっきり言えたのが良かったのか、鷲匠はそこについてはそれ以上斬り込んでこない。
代わりにふぅと息をついてこう言った。

「で、ありゃちゃんと食ってんのか。」
「え、はい、食べてます。」

寧ろ大食い寄りです、とは流石に言えない。

「その、虐待の心配はないです。」

鷲匠の真意はよくわからなかったが少なくとも美沙が全体的にヒョロヒョロしているのが気になったのだろうとは力は思う。

「親は寧ろ可愛がってます。」
「ならいい。けどあの腹は何とかさせろ、みっともねぇ。」

予想外の指摘に力は思わず苦笑した。ベンチ温め組で存在を忘れられかねない自分の義妹が天下の白鳥沢を率いる名監督に栄養不足と筋肉不足の心配をされるとは、人生何が有るかわからない。

「はい。」

力は言って失礼しますと一礼、烏野の方へ戻った。
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