第38章 【トラブルドゥトラベリング】その4

「ままコに頭下げてる。ぜってぇそんなキャラじゃないのに。」
「ぐううう、美沙すげぇ。」
「日向がままコさんと張り合ってどーすんの。というか」
「美沙さんの伝説がまた増えたね。何かもうまとめサイト作れそう。」
「レイアウトなら任せてっ。」
「山口も谷地さんもネタに乗らないで。」
「おい侑君が手玉に取られとるぞ。」
「希少な映像だな。銀は笑い方うるさい。」
「いやお前無茶言うなや、笑うしかあらへんって。」
「阿呆ツム。阿呆すぎやから思わず動画撮ってもたわ。」
「またわざわざ喧嘩の種を。」

とまぁ関係者も当然コメントしまくる訳だが一方の宮侑は既に立ち直っていた。
ノリノリで美沙の肩を引き寄せ自分のスマホで自撮りをしている。
間違いなく義兄の力がいたら見せられない、暴れ出して木下と成田以下烏野の２年生達が総出で止めに入る案件だ。

「ままコちゃん表情固いってぇ。飛雄くんみたいやで。」
「私こんなん慣れてへんくて。ちゅうか影山よりは表情筋生きとうし。」
「何だとままコボゲェッ。」
「事実じゃんかよ。」
「日向はブットバスっ。」
「ほな行くでぇ。」

言っている間に侑はにっこにこでスマホを操作する。
パシャッとカメラアプリのシャッター音が響いた。

「お、めっちゃええやんっ。」

写真ビューアで確認した侑は目が無駄に輝いていた。

「サムのよりうまい具合やな。」
「阿呆抜かせ、こっちは上手な子に撮ってもろたから綺麗に収まっとうわ。」
「なあままコちゃんこれネットにアップ」
「絶対あかん、あと兄さんに言うたる。」
「冗談やて、睨むなや。あそーやそこのマネちゃん、もっぺん俺等撮ったってっ。」
「りょ、了解しましたっ。」
「ごめんなやっちゃん、何や妙な人に巻き込んでもて。」
「大丈夫だよ、美沙さん。」
「妙てまたまた、ままコちゃんはホンマツンデレやなぁ。」
「もうはたいてええやろかこの人。」
「ダメだよ美沙さんっ。」
「治さんはええって言うてくれそうな予感やけど。」
「と、とにかく撮りますねっ。」

このままでは美沙が本当に侑をはたきかねないと思ったのだろう、谷地は慌てて話を中断して侑から渡されたスマホを構える。