第25章 【パニック at the 文化祭　後編　その1】

「青城っ。」

二口と青根を案内したテーブルはよりにもよって及川と岩泉が座っているすぐ隣だった。ひどい鉢合わせである。

「ヤッホー、なーんかお口悪い子いると思ったら伊達工の君だったんだ。」
「相変わらず人の神経逆撫ですんのが無駄にうまいっすね。」
「及川、唯でさえ恥晒してんだからやめろ。悪いな、うちの馬鹿が。」
「いーえー。」

美沙は必死で聞かんかった振り聞かんかった振りと思いながら二口と青根に注文を聞く。
とりあえず注文を言った二口がここで上から下まで美沙をジロジロ見て呟いた。

「半分ボケでも着飾りゃそれなりにはなるのな、今世紀最大のびっくりだわ。」

腹立つ物言いに美沙は頑張ってはいはいと流す。

「まーただ口を開かなきゃだけどよ。」

そらあんたもやろと美沙としては言いたいところだ。いつも思うが二口はご面相は悪くないのに口が悪いことこの上ない。

「あの兄は何も言わなかったのか。」

青根にまで言われるとは何事か。

「何分くじで決まったんで兄は諦めてます。」
「そうか。」
「あ、美沙ちゃーん。」
「また何ですのん。」
「可愛いー。」
「てめぇそろそろ机に沈められてぇか。」
「ケッ、天下の及川さんも焼きが回ったもんですねぇ。ここんとこ目当ての女子に無視されまくりなもんでヤケクソっスか。」
「美沙ちゃんの良さがわかんないなんて二口君もおこちゃまだねぇ。それとも照れ隠しかなっ。」
「じょーだん、誰がこんなわけわかんねーブラコン半分ボケにっ。」
「そんな事ばっかり言ってたらさ、君こそいつか目当ての子逃しても知らないよ。」
「アンタに知って貰わないでケッコーっすよ、お構いなく。」
「あっちょ、岩ちゃん今の見たっ。」
「今度は何だクソ川。」
「美沙ちゃんがお盆こやって持ってたの見たっ、めっちゃ可愛いっ。」
「いつも人の事散々語彙が貧弱つっといて今のお前は何だ。」
「残念、超一瞬だったから写真撮り損ねちゃった。」
「後で呼びつけてやってもらやいいじゃないスか。」
「何言ってんのさ、縁下君が許してくんないに決まってんじゃん。」
「烏野6番のシスコンぶりも異常ってんだよ。」
「兄はどうもあそこから見ているようだが。」
「バカヤロ青根それ先言えっ、俺の命が危ういだろっ。」