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【ハイキュー】ウシワカイモウト

第2章 ・幸いと悩み


牛島文緒になった少女にとってまず幸いだったのは義母も義理の祖母も文緒に対して好意的だったことだ。失礼ながら文緒は冷遇される可能性も本気で覚悟していた。親戚といってもほぼ他人レベルの遠さ、その娘を押し付けられたと取られていても不思議はないと思っていたのである。
しかし実際はまともに教育はつけてもらえるし食べさせてもらえるし牛島家に入ったからにはといった事で極端にきつく当たられるわけでもなく、しかも義母は文緒との関係づくりに熱心だった。ただ引き取られることが決まった際に義母からはこう言われた、出来るだけ若利の側にいてやってほしいと。

「側に。」

言われた時に思わず問い返したのを覚えている。

「私が、若利さんの側にですか。」

いいのかそれはといったニュアンスで問うたそれに対して義母は頷き、お願いねと念を押すように言った。義母は意図を教えてくれない。ただ文緒としては義兄となる人の側にいることが認められるならそれは願ったり叶ったりだった。というのも義兄となる若利は初めて会った時から文緒を強く惹きつけた。何故かと問われると具体的に述べることは難しい。しかし文緒はこの人の為なら出来ることをしたいと思った。本能といっても良いだろう。

そうなると次は悩みである。文緒は意欲的に義母の希望に沿おうとしていた。ところが程なく義兄となった人は部活やなんやで文緒と時間が合わないことが多く物理的に側にいるのは難しい事がわかる。なのでまずは出来る限り会話をしてみることから始めた。元来大人しい文緒はあまりそういう事が得意でないが話してみなければどうにもならない。挨拶はもちろん若利が帰ってきたらできる限り出迎え、食事も共にしてみる。ところが

「今日は冷えましたね、兄様。」
「ああ。」
「体を壊す人もいるみたいでクラスでもくしゃみをしている人がいました。あ、五色君は元気でしたが。」
「そうか。」
「それとも五色君はいつもでしょうか。」
「ああ。」
「兄様もお気をつけて。」
「問題ない。」
「そう、ですか。」

話が続けにくい事この上ない。結局若利はとっとと部屋に引き上げてしまいどうしようもなくなった文緒がポツンと残される事となる。
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