第11章 缶ビール
「じゃあ少し様子見に帰りますね。」
「おー、気ぃ付けてな。」
男子バレー部の合宿中。
1日目が終了し今はプライベートの時間だ。
プライベートとはいえ、ただ部屋で酒を飲むぐらいだが。
一人で缶ビールを飲みながら寛いでいると
トントンと襖を叩く音がした。
「なんだー?」
部屋の向こうにいる奴に声をかけると
襖が少し開きマネージャーの香坂が
ひょこっと顔を出した。
「香坂か、どうした?」
「烏養さん、お風呂空きましたよ。」
「おー、サンキュー。」
香坂に軽くお礼を言って俺はごろりと横になった。
……ん?何か視線を感じる。
横になったままキョロキョロと辺りを見回すと部屋に戻ったと思っていた香坂と目が合う。
俺は慌てて起き上がった。
「香坂まだ戻ってなかったのかよ!
武田先生に用事か?武田先生なら今飼い猫の様子を見に自宅に戻ってて居ねぇぞ?」
「別に武田先生に用事じゃありません!ビール美味しそうだなって思って見てました!」
「あ?お前ビール飲むのかよ。」
「はい、たまにですけど。烏養さん私にも1本下さい♪」
未成年に酒をやる奴が何処にいるんだ。
「お前にビールなんか飲ませる訳いかないだろ。ほらっ部屋に戻った戻った!」
「嫌です!ビールご馳走してくれるまで部屋に戻りません!一人で飲むより二人のほうが楽しいですよ♪」
何度か香坂に部屋に戻れと言ったが
ビール飲むまで戻らないの一点張りだった。
しゃーねぇな。
香坂にはこれを出すか。
「……わかったよ、1本やるから飲んだら部屋戻れよ。」
「やった!ありがとうございます!」
香坂は嬉しそうに部屋に上がってきた。
「ほら、これ飲めよ。」
俺は1つの缶を手渡すと香坂は缶のパッケージをジーっと見ていた。
「烏養さん、これノンアルコールビールじゃないですか!」
……ほらきた。
「未成年にアルコールなんて出すか!
これもお前に飲ませていいもんじゃねぇんだからな!武田先生にバレたらただ事じゃ済まされねぇんだぞ?これ飲んだら部屋にさっさと戻れ!」
俺は香坂にビシッと言ってやった。