第19章 力
歩いても歩いても、黒い少年は追いかけて来る。白い少年とネコも追いかけて来る。
十束「・・・ねぇ、怜。彼らから逃げるにはどうしたらいいのかな?」
怜「一瞬でいいから私達を視界から消せたら何とでもする。」
十束「ん、じゃあそうしよっか。」
十束は落ち着いたようで、いつもの調子に戻っていた。
今度は十束が怜の手を引いて歩き出す。
十束「いい?あくまで平然と歩いてね。」
怜「分かってる。」
十束「一瞬でいいんだよね?」
怜「うん。」
クロ「・・・随分と呑気な女だな。」
シロ「クロ~!カップルの尾行なんてやめようよー。」
クロ「アイツはお前の手助けをしたんだ。お前の事を何か知っているかもしれないだろ。それに、貴様はどうせ感謝の言葉も言っていないのだろう?」
ネコ「吾輩あの人と友達になりたーい!」
クロ「・・・。」
隣にいる男、どこかで見覚えが・・・?
二人が曲がり角を曲がったので三人は慌てて追いかけて曲がる。
ネコ「・・・にゃ?」
クロ「・・・いない・・!?」
シロ「あはは・・・バレてたのかなぁ?」
確かに曲がり角を曲がったハズだ。多くの人がいるが、見間違うわけがない。
建物の壁や上を見上げるも、人影すらない。
クロ「・・・ストレインか。」
シロ「うーん・・・でも、また会えるよ!多分だけど!」
ネコ「にゃー・・・。」
多々良「怜ちゃん凄いねぇ。」
怜「そう?」
怜は十束多々良を抱えてビルの屋上にいた。
いわゆる、姫抱きというやつで。
多々良「女の子に姫抱きされたのは初めてかなぁ。」
怜「・・・ごめん、軽率だったね。」
多々良「・・・何が?」
怜「貴方、殺されかけたのに。」
現に、彼は白い少年に出会って動揺を見せた。
多々良「・・・大丈夫、大丈夫。ちょっと驚いただけ。あの時と随分雰囲気が違ったから・・。」
怜「・・・違った?」
歯車が動く音が聞こえた気がした。